至上の幸福、「極楽」

勤勉・倹約・正直・憐み・・、その成果としての農産物などのゆたかさ、それを享受すること

「困苦の生活と変革的状況がふかまるとき、民衆の自意識は支配的思想からみずからを剥離し、独自の理想世界についてのイメージャリィを育てる・・こうしたイメージャリィは、基本的には、家族を単位とした勤勉で篤実な労働(とりわけ農耕)とその成果の豊かな享受ということであり、天地自然はそうした民衆の努力と享受を保証している本源的な神性だということであったと思われる。」(
安丸良夫出口なお』,岩波現代文庫,p.219)

 

「なおは、日本の民衆が歴史のなかで育ててきた資質を、あるつきつめたかたちでうけつぎ、そこに拠点をすえて、みずからのはげしい苦難からかぎりないほどゆたかな意味をくみとり、私たちの世界のもっとも根源的な不正と残虐性とにたちむかったのであった。こうしてなおは、みずからの生の貧しさを、かえって、根源的な豊かさにつくりかえたのである。 その意味で、なおは、もっともよく戦った人生の戦士だった。」(同,p.265)

 

 戦前の新興宗教の多くが天皇制ナショナリズムに同一化していったなかで、「抑圧された民衆の立場をもっとも戦闘的に代表する宗教」(安丸)をつくり出した出口なおという一生活民の思想的意味については、このような時代だからこそもっと言及されてよいと思う。